秋の夜長にゆっくり読みたい、滋賀県が舞台の文学作品
すっかり季節は秋めいて夜が長く感じられる今日この頃、みなさんどのようにお過ごしでしょうか。音楽を聴いたり、映画を見たり、読書をしたり、秋は不思議と芸術的なものにふれたくなる人も多いはず。そこで今回は、秋の夜長にぴったりな、滋賀県が舞台の文学作品をいくつかご紹介します。物語を通して感じる滋賀のまちは、一段と美しく、読み終わる頃には、きっと登場シーンの地へ赴きたくなるはず。ぜひ秋満開の物語の舞台へもお出かけください。
■「功名が辻」 司馬遼太郎(著)
2006年のNHK大河ドラマにもなった、司馬遼太郎の代表作。「近江を制するものは天下を制す」と言われた戦国時代に夫婦で手を取り合い、豊臣秀吉、徳川家康らに仕え、のちに土佐の大名にまで上りつめた、山内一豊とその妻千代の物語。一豊が城主となった長浜をはじめ、夫婦ゆかりの北近江が数多く登場し、大河ドラマのロケも、長浜、米原、坂本、甲賀など滋賀の各地で実際に行われました。
■「街道をゆく 第1巻」 司馬遼太郎(著)
1971年の連載開始以降、亡くなる1996年まで25年にわたり、司馬遼太郎が旅しながら日本民族の文化と源流を探り、人の暮らしを記録し続けたシリーズ作。その記念すべき第1回目に登場するのが、「楽浪(ささなみ)の志賀」と呼ばれた湖西のみち。大津から北上し、近江最古の神社「白髭神社」や安曇川町の集落、興聖寺などを訪れ、朝鮮半島(新羅)とのかかわりや、織田信長、足利義晴の足跡を辿ります。
■「故郷の廃家」 饗庭孝男(著)
700年つづく高島の旧家に生まれた著者が、一族のルーツを辿るなかで見つけた、滋賀県、特に高島や湖西に根付いてきた風習や文化を、饗庭(あえば)家の人々の生と死に重ね合わせながら、独自の視点で語る歴史随筆。誰もが自分を形成する格の中に、名前も知らない祖先が過ごした故郷のカケラがあることを確信し、思わず自分のツールを辿りたくなる一冊。第30回滋賀県文化賞も受賞。
■「トリガール!」 中村航(著)
1977年に近江八幡市の宮ヶ浜水泳場で第1回が開催され、現在は彦根市の松原水泳場で行われている「鳥人間コンテスト」を題材にした、青春ストーリー。実際の参加者も太鼓判を押すほどリアルに描かれた練習風景や、テレビではあまり語られることのない裏方たちの活躍など、汗だくになるほど爽やかな若者たちの青春がぎっしり。読後は、昔懐かしい日々がよみがえり、若き日の青春を仲間と語りたくなること間違いなし。
<まとめ>
いかがでしたか?日々何気なく見ている風景や通っている街角も、誰かの目を通してみると、新しい発見があります。書物や言い伝えの中にしか留まることのできない歴史でさえ、まるでリアルに体験しているかのようにありありと感じることができる、文学にはそんな力があるんです。物語を楽しんだ後は、ぜひその舞台にも足を運んでみてくださいね。今回ご紹介したものはほんの一部です。みなさんも滋賀県を舞台にした素敵な作品を探してみてください。